アレルギー性鼻炎
●症状
鼻水、くしゃみ、鼻つまりなどがアレルギー性鼻炎の症状です。
鼻水、くしゃみ、鼻つまりなどの症状によって、集中力の低下やイライラ、不眠症の原因になることがあります。
●季節性と通年性
季節性のアレルギー性鼻炎を花粉症と定義します。
通年性のアレルギー性鼻炎であれば、ダニ、ハウスダスト、犬、猫の毛、フケなどの原因物質(アレルゲン)を疑います。季節性のアレルギー性鼻炎では、何月に症状が始まり、何月まで続くかにより原因物質を疑うことができます。
関東地方で花粉の主な飛散時期は杉は2-4月上旬、ひのきは3-4月、イネ科(カモガヤ、オオアワガエリ)は5-8月、ヨモギ・ブタクサは8月下旬-10月です。
●検査
血液検査で好酸球が上昇することがあります。血液検査で非特異的IgE(免疫グロブリンE)や特異的IgE(免疫グロブリンE)を調べます。吸入抗原(ヤケヒョウヒダニ、ハウスダスト、スギ、ヒノキ、カモガヤ、オオアワガエリ、ヨモギ、ブタクサなど)に対する特異的IgEを調べることでアレルギー反応の強さを0から6の7段階で評価します。
●薬物治療
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ルパフィン、クラリチンなどを基本にし、症状が強い場合はオノンや小青竜湯(漢方)を処方します。
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アレルギー注射(ケナコルト、ノイロトロピン)《自費》一般的にステロイドはこわいと思いがちですが、40㎎の投与を花粉症シーズンに年1-2回注射することは問題ないと思います。念のため、感染症、糖尿病、胃潰瘍の有無などを判断してから注射を行っています。
蕁麻疹
●症状
典型的には盛り上がっていてかゆい皮疹です。
また、近年汗をかくと蕁麻疹がでるコリン誘発性蕁麻疹というものがあります。
典型的には数ミリ大の皮疹が左右対称にピリピリした痛みを伴って出現します。
小児期から青年期に後発します。
●原因
食物や薬剤などのアレルギー、運動、入浴、ストレスや寒冷などがあります。
明らかに原因の分かっているものは半分以下で、半分以上は原因不明です。
●検査
アレルギー物質(エビ、カニ、卵白、大豆、小麦、そば、キウイ、バナナ、サバ、サケなど)を調べることができます。
●治療
蕁麻疹の皮疹には、ステロイド剤を塗布します。
また、半数以上は原因不明なため、抗アレルギー剤の内服をします。
湿疹
●症状
一般的にはかゆみを伴う赤い斑やぶつぶつ、盛り上がりができる湿疹が一般的です。
湿疹をかいてしまうとじゅくじゅくした状態になることもあります。
●原因
原因としては、汗やあわない化粧品などの刺激、虫刺されや乾燥も原因となります。
また、摂取した食物のアレルギー反応としてあらわれる場合もあります。
コロナ下では已むをえませんが、手の洗いすぎやアルコールにより皮膚の乾燥を起こし皮膚バリアー機能が低下している場合に湿疹を来しやすくなります。
●治療
炎症を抑えるステロイドの外用剤(ロコイド、リンデロンV、アンテベート、デルモベート)や乾燥が強い場合は保湿剤(ヒルドイド)を使用します。ステロイド外用剤にも強さがあり、部位、年齢、湿疹の状態により使い分けます。弱い:プレドニゾロンクリーム 中間:ロコイド強い:リンデロンV とても強い:アンテベート 一番強い:デルモベート 保湿剤として利用されるヒルドイド(ヘパリン類似物質)にも、形状によるクリーム、軟膏、ローション、泡があり、水分量、油分、のびが異なるため、部位、範囲、季節により使い分けます。
気管支喘息
●気管支喘息とは
主にアレルギーによって、気道、気管支に慢性的な炎症を来し、気道が細くなり呼吸がしにくくなる病気です。
●症状・診察
喘息発作時は息は吸いにくいより吐き出しにくいという症状があり、聴診では呼気時にヒューヒューといった気道狭窄音(wheeze)が聴取されます。
●アレルギーを起こす物質
アレルギーを起こす物質として、ダニ、ハウスダスト、犬猫のフケなどがあり、血液検査でアレルギー検査を調べることができます。
喘息発作を起こす誘因として、気管支炎などの気道感染、喫煙、ストレス、月経周期、台風などの気圧、薬剤(アスピリン)が知られています。
●治療
喘息の治療として毎日定期的に使用する予防薬と発作時の治療薬に分けられます。
予防薬としては、吸入ステロイドと長時間作用型β2刺激薬が合剤になったアドエアやレルベアという薬やテオフィリン製剤(テオドール)、ロイコトリエン拮抗薬(オノン)などがあります。
発作時には、β刺激薬のネブライザー吸入、ステロイド、アドレナリン皮下注などが重症度によって使い分けます。
気管支喘息の患者さんには、ゾレアという比較的新しい注射薬があります。
体重とIgEから投与量、投与間隔が決まります。薬剤が保険が効いて150㎎で約9000円、300㎎で約18000円、600㎎で約36000円と高価な薬です。2週ないし4週間間隔で注射します。症状発現初期に注射することが望ましく、16週を目途に効果判定をします。
即時型食物アレルギー
●即時型食物アレルギーとは
原因となる食物を食べてから、30分程度で蕁麻疹や湿疹、目の脹れ、かゆみ、くしゃみ、のどのイガイガ、腹痛、嘔吐などの症状を認めます。
どの年代にも発症しますが、0,1歳児が多いです。0歳児では卵、小麦、牛乳などが多いです。乳児期に発症した方は年齢があがるにつれて治る方も多いです。
●検査
血液検査やプリックテスト(アレルゲンと考えられる物質を1滴たらし、針でこすって反応を見る検査)、食物経口不可試験(医師の指導のもとアレルゲンと考える物質をゆっくり食べてもらう。アレルギー反応が出た時のため、入院下で行うことが望ましい)があります。
●治療
原因食物を摂取しないようにすることが重要ですが、誤ってたべてしまった時は、症状に応じて抗ヒスタミン薬、経口ステロイド、ステロイド外用などを使用します。
アナフィラキシー
●アナフィラキシーとは
特定の食物や薬剤、蜂刺され(2回目以降)などに対し、全身のアレルギー反応が引き起こされ、意識状態の悪化、血圧低下などのショック状態が起こることを言います。
●治療
喉頭、気道粘膜の浮腫から呼吸困難を来すため、速やかな加療が必要です。
自宅にいる場合は救急車を呼ぶべき疾病です。
当院では酸素投与、輸液、アドレナリン0.3mg筋注などの対応が可能です。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー
●食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは
特定のアレルギー物質を摂取後に数時間以内に運動することでアレルギー症状があらわれます。
アレルギー物質として、小麦、えび、かになどの甲殻類、くだものなどがあげられます。
激しい運動によりアレルギー物質の吸収が良くなり発症すると考えられています。
アナフィラキシーですので蕁麻疹、咳、呼吸困難の症状が出現し、重症な場合は意識障害、血圧低下などのショック状態になります。
●治療
アナフィラキシーではアドレナリンの注射を打ちます。
●予防
日々の予防として、医療機関でアレルギー食物の特定とその食物を無理のない範囲で避ける事、どうしても食べたい場合は食後の運動を避けるようにする必要があります。
口腔アレルギー症候群
●口腔アレルギー症候群とは
ある果物や生野菜を摂取したときに口のかゆみや刺激、のどの奥が詰まる感じがする症状です。
果物や生野菜に含まれるアレルゲンが口の中の粘膜に反応し、炎症を起こします。
花粉症やアレルギーの方に起こりやすい果物、生野菜が知られています。
スギ花粉症ではトマト、ぶたくさの花粉症ではメロン、すいかなどが知られています。
ラテックスアレルギー(ゴム手袋)では、バナナ、マンゴー、キウイなどが知られいます。
●予防
アレルゲンとなる果物、生野菜を避けるようにします。
舌下免疫療法(シダキュア・ミティキュア)
シダキュアはスギ花粉症に対する、ミティキュアはダニアレルギー性鼻炎と診断された患者さんがうけることができる治療です。
●アレルギー性鼻炎の治療
一般的にアレルギー性鼻炎の治療には、鼻炎症状を抑えるための対症療法としての抗アレルギー剤が使用されます。この治療で症状が抑えられる方は良いのですが、スギ花粉症が重度である場合は症状が抑えられなかったり、ダニアレルギー性鼻炎の場合服薬が一年中になる可能性があります。
舌下免疫療法は少量のスギ抗原、ダニ抗原を舌下に投与することで、徐々に体に慣らして、アレルギー症状を軽くする治療です。
●舌下免疫治療が可能な方
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血液検査でスギ・ダニに対するアレルギーがあるかを調べ、スギ・ダニアレルギーのある方
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5歳以上65歳未満の方
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1分間舌下保持し、飲み込んだ後5分間飲食不可、内服後2時間は運動や入浴やアルコールをさけることができる方
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1か月に1回受診ができる方
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毎日服用できる方
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3年程度の内服が必要なことを理解できる方
●舌下免疫療法ができない方
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気管支喘息が重度の方
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65歳以上、5歳未満
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授乳婦、妊婦
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ステロイド内服している方
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非選択的β遮断薬内服している方
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悪性腫瘍・自己免疫疾患・免疫不全のある方
●スケジュール
治療可能な場合は来院して頂き1回目の投与をします。30分間様子をみて診察後問題なければ帰って頂けます。頻度の多い副作用として、口腔内のかゆみ(口腔掻痒症)、口腔浮腫、咽頭刺激感などの軽微な副作用が各10-20%程度見られることがあります。
2週目以降は薬を増量して舌下して頂きます。
●注意点
シダキュアの治療開始はスギ花粉の飛散のない6-12月が望ましいです。(ミティキュアはいつでも開始可能)
飲み忘れがないか、副作用がないかの評価をするため月に1度の診察が必要です。
1か月以上休薬した場合の再開は少ない用量から再開が望ましい場合があります。
アトピー性皮膚炎
かゆみを伴う湿疹が左右対称にできます。寛解・増悪を繰り返しします。
アトピー性素因と言われるような、家族歴、既往歴(喘息、アレルギー性鼻炎など)がある方に多いです。
アトピー性皮膚炎は慢性の病気ですので、初期は紅斑(赤い)・丘疹(ぶつぶつ)などの所見がみられますが、慢性化してくると苔癬化(象のように固くゴワゴワになる)してきます。
●好発部位
口、眼、おでこ、耳、四肢関節屈曲部、体幹
乳児期:顔、頭
幼少期:首、四肢屈曲部
思春期:成人期:顔、首、背中、胸部
●診断
かゆみのある新旧混在する特徴的な皮疹が慢性の経過(乳児2カ月以上、その他では半年以上)で存在すること
ダニ、ハウスダストなどのアレルギーがある方もアトピーになりやすいため、アレルギー検査も有用です。
●治療
乾燥肌には、ヒルドイド軟膏、発赤、・湿疹にはステロイド軟膏を使用します。
苔癬化した皮膚にはプロトピック軟膏を使用します。プロトピック軟膏は2歳以上で使用可能です。
掻き壊した皮膚は細菌感染の可能性があり、抗菌薬の投与を検討します。
アレルギー検査(View39)
1度の簡単な採血で39種類のアレルギーの原因を調べられる検査です。
アレルギー性疾患の主要な原因アレルゲンの項目が入っています。
[吸入系・その他]
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室内の塵:ヤケヒョウヒダニ、ハウスダスト
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動物:ネコ、イヌ
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昆虫:ガ、ゴキブリ
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樹木:スギ、ヒノキ、ハンノキ、シラカンバ
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草:カモガヤ、ブタクサ、ヨモギ、オオアワガエリ
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カビ:アルテルナリア(スズカビ)、アスペルギルス(コウジカビ)、カンジダ、マラセチア、ラテックス
[食物系]
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卵:卵白、オボムコイド
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牛乳:ミルク
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小麦:小麦
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豆、穀物、ナッツ類:ピーナッツ、大豆、そば、ごま、米
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甲殻類:エビ、カニ
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果物:キウイ、りんご、バナナ
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魚、肉類:マグロ、サケ、サバ、牛肉、豚肉、鶏肉
プリックテスト
即時型アレルギーをみる検査です。アレルギーエキスを前腕に垂らし、プリック針(23G針)で皮膚にこすります。15分後に同部位が盛り上がっているか(膨疹)で判定します。陽性コントロールとして、ヒスタミン液を使用するか、3㎜以上の膨疹で陽性と判定します。食物アレルギーや花粉症などの判定が可能です。食物アレルギーが疑われる場合は実際の食物を持参いただき、アレルギーエキスの代わりに使用することも可能です。