起立性調節障害
●起立性調節障害とは
自律神経機能の乱れにより、めまい、たちくらみ、乗り物酔い、頭痛、倦怠感、腹痛、失神などを引き起こす疾患です。
10-16歳が好発年齢であり、症状は午前中に強く、午後には改善する傾向があるため、朝起きられず、不登校の原因になります。
●原因
自律神経機能不全による脳血流低下が考えられています。コロナ禍においては、心理社会的ストレスや運動量の低下が、病状を悪化させることもあります。
●症状
起立性調節障害により、睡眠障害、集中力低下、不登校などを引き起こします。
●治療
起立性調節障害と診断するには、甲状腺機能低下、副腎皮質機能低下、貧血、心疾患、てんかんなどの基礎疾患を除外する必要があります。
基礎疾患が除外される場合は、診断・類型・重症度のため、新起立試験を行います。仰臥位と起立した状態で心電図による心拍測定・血圧測定を行います。
水分摂取が少ない方は1日に1.5L程度の水分摂取をおすすめします。また、散歩などでもよいので、1日30分程度の運動をしましょう。足の血流うっ滞を改善する目的で弾性ストッキングを使用する場合もあります。
薬物治療は、血圧を上昇させる薬を使用します。末梢血管を収縮させて血圧上昇させるミドドリンや交感神経に作用して血圧を上昇させるメチル硫酸アメニジウム、心拍数を抑えて血圧を上昇させるプロプラノールなどの薬を使用します。
親の立場になってみると、朝何度起こしても起きない、不登校、遅刻・欠席に対し学校の理解が得られないなどの苦労があります。病気による遅刻や不登校であることを学校側に理解してもらう必要があり、診断書の提出や養護教諭との連携が必要になります。
起立性調節障害は生命に直結する病気ではありません。
しかし日常生活だけでなく、若者の青春や今後の進路に影をおとす可能性のある病気です。
一人で・ご家族で抱え込まずに、まずは医療機関を受診して相談してみてください。
突発性発疹
●症状
乳児期に発症します。
38度の発熱が3日間続いた後、解熱とともに淡く赤い盛り上がった湿疹(丘疹)が体幹を中心に顔面、四肢に出現します。
●原因
ヘルペスウイルス6.7が原因と言われています。
病初期は発熱のみなので、診断が困難なことが多いですが、咽頭の口蓋垂の根元に永山斑といわれる紅色隆起がみられることがあります。
●治療
ウイルスですので基本的には自分の免疫で治ります。
熱や痛みが引くまで間、解熱鎮痛剤による対症療法を行います。
病初期に熱性けいれんを合併することはありますが予後は良好です。
ヘルパンギーナ
●ヘルパンギーナとは
乳幼児に多い夏風邪の一種です。主にコクサッキーウイルスに感染して起こります。
夏に多いですがその他の季節にもおこります。
●症状
他のウイルスによる風邪の違いはヘルパンギーナは突然の高熱で発症し、のどの痛みが特徴で、食事ができなくなることもあります。のどの奥に水泡ができていることが多いです。
2-4日で解熱し、1週間程度でのどの水泡は治ります。
●治療
ウイルスですので基本的には自分の免疫で治ります。
熱や痛みが引くまで間、解熱鎮痛剤による対症療法を行います。
便からもウイルスが排出され感染源となるので手洗いや手指消毒に気をつけます。
手足口病
●症状
夏風邪の一種で、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスに感染して起こります。
病名のごとく、手のひら・足の裏・口の中に水泡(水ぶくれ)ができる病気です。
ヘルパンギーナの場合はのどの奥に水泡ができますが、手足口病の場合は口の中全体に水泡ができます。
また、発熱がみられるのは3割程度で、その発熱も多くは38度以下の微熱が多いという特徴があります。
●治療
手足口病の原因はウイルスですので基本的には自分の免疫で治ります。
熱や痛みが引くまで間、解熱鎮痛剤による対症療法を行います。
アデノウイルス
●症状
比較的夏に多くみられる感染症です。
様々な型があり、咽頭炎、肺炎、結膜炎、膀胱炎、乳児下痢症、髄膜炎など様々な病気を引き起こします。
潜伏期は5日間です。
プール熱と呼ばれている、咽頭結膜熱もアデノウイルスが原因です。
のどの痛み、38度-39度の発熱、目の充血などが見られます。
●咽頭結膜熱について
咽頭結膜熱は学校伝染病であり、症状がおさまってから2日間は休まなければなりません。
●検査
当院ではアデノウイルスの迅速診断が可能です。
RSウイルス
●症状
秋から冬にかけて流行する風邪ウイルスの一種です。
4日程度の潜伏期を経て、初期には、鼻汁、咽頭痛で発症します。
気管支に炎症が及ぶようになると、咳がでます。
●治療
基本的にはウイルスのため自分の免疫で治りますが、早産のお子さんや生まれつき心臓疾患のあるお子さんは重症化リスクがあり注意が必要です。
気管支炎を起こすと、咳で哺乳できなくなったり、さらに進行すると唇が紫になるような低酸素を認めることがあります。そのような状態では入院適応となります。
伝染性紅斑(リンゴ病)
●症状
小学生の小児に多いです。
頬が赤くなるためリンゴ病と呼ばれています。
腕や足などの皮膚が赤くなったり、血球減少を来すことがあります。
●原因
パルボウイルスB19というウイルスが原因で起こります。
●治療
頬が赤くなる段階は感染力がない状態なので登園可能です。
基本的にはウイルスのため自分の免疫で治ります。
百日咳
●症状
百日咳菌による長引く咳を来す呼吸器感染症です。
長引く咳、咳が終わり息を吸うときに笛のような音がする、夜間に咳が多い、せき込んで吐いてしまうなどの症状があれば、百日咳を疑い、鼻咽頭より遺伝子検査(百日咳菌核酸検出)を行います。
●遺伝子検査
遺伝子検査には数日結果がでるまでかかるため、疑ったらクラリスやジスロマックなどのマクロライド系抗生剤を使用します。学校保健安全法では、咳が消失するまで又は5日間適正な抗生剤の投与が終了するまで学校は出席停止とされています。
●予防接種について
乳幼児期に接種する四種混合に含まれていますが、5-6歳では抗体価が低下するため、日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールでは、5歳以上7歳未満に三種混合ワクチンの任意接種が推奨されています。
大人でも抗体価の低下より流行することがありますので、百日咳のワクチンを含んだ三種混合ワクチンの接種が必要と考えます。
クループ症候群
●症状
感染やアレルギー反応により喉頭に炎症が起き、犬吠様の咳、息を吸うときに喘鳴を来す疾患です。
●原因
ウイルスによる喉頭炎(パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルス)、インフルエンザ桿菌による急性喉頭蓋炎、アナフィラキシーなどの原因があります。
●治療
呼吸の通り道を確保するため、炎症を抑えるステロイドや、気道を拡張させる目的でアドレナリンの投与を行います。
細菌性を疑うような高熱な場合は抗生剤の投与が必要です。
加療にて症状の改善が見られない場合、食事や水がとれない場合は入院管理が必要です。
マイコプラズマ肺炎
●症状
マイコプラズマという細菌による呼吸器感染症です。
発熱、筋肉痛、全身倦怠感などから発症し、3-5日後に痰のからまない乾いた咳が出現します。
2週間程度咳が続くこともあり、レントゲンで肺炎像がないか確認します。
●検査
診断として、迅速診断法、核酸検出法、血中抗体価測定法などがあります。
核酸検出法や、血中抗体価測定法は結果がでるまでに時間がかかり、迅速診断法は感度が60-70%とそこまで高くないなどの問題点もあります。
●治療
マイコプラズマには細胞壁がないため通常のペニシリン系、セフェム系の抗生剤が効かないため、マイコプラズマを疑った際はクラリスなどのマクロライド系やオゼックスなどのニューキノロン系を投与する必要があります。
川崎病
●症状
原因不明の発熱疾患です。
5日以上続く発熱、目の充血、頸部リンパ節腫脹、発疹、口唇の腫脹やイチゴ舌、手足の紅斑や皮むけなどの症状がみられます。
●治療
川崎病と診断されたら、入院下で免疫グロブリンという血液製剤を大量に投与します。
治療が遅れた場合や解熱しない場合に、冠動脈瘤という心臓を栄養する血管に動脈瘤ができる可能性があり、注意が必要です。
水痘(水ぼうそう)
●症状
2週間の潜伏期を経て、発熱、倦怠感、全身の発疹で発症します。
発疹は頭部、体幹、四肢の順に出現します。発疹にはかゆみがあります。
2014年に水痘ワクチンが定期接種となり、患者数は減っています。
●治療
水痘・帯状疱疹ウイルスが原因のため治療には、アシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス薬が有効で、症状を軽減できます。
●帯状疱疹にについて
水痘に感染した方が大人になり、疲れなど免疫力が低下した際に帯状疱疹として発症することがあり、注意が必要です。
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
●症状
ムンプスウイルスによる感染症です。
頬の下の耳下腺という唾液を出す組織が腫脹します。両側の事も片側の事もあります。
髄膜炎や精巣炎などの合併症もみられことがあり注意が必要です。
●治療
流行性耳下腺炎の原因はウイルスですので基本的には自分の免疫で治ります。
●通園・通学
学校には耳下腺の腫脹開始から5日間経過するまで登校できません。
麻疹(はしか)
●麻疹について
麻疹ウイルス感染によっておこります。空気感染し感染力は非常に強いです。
予防接種の接種率の向上により、日本古来の麻疹ウイルスは排除されている状態です。
現在は年間数十人の発生で、海外からの輸入感染症と考えられています。
ただ、麻疹は1000人に1人程度に脳炎を合併することが知られる怖い病気なので1歳になったらワクチンを接種しましょう。
●症状
感染後10-14日間の潜伏期を経て、38℃の発熱や上気道症状を経て、39℃の発熱とともに頭頚部より発疹が全身に広がります。
風疹
●症状
風疹ウイルス感染によって起こります。
2-3週程度の潜伏期を経て、発熱、発疹、リンパ節腫脹が見られます。
脳炎や血小板減少性紫斑病などの合併症も2000-5000人に一人みられます。
日本では2006年に定期接種化され、小児の感染率は低下しました。
●予防接種について
予防接種の接種対象外だった男性の流行が近年みられ、妊娠初期における妊婦感染により先天性風疹症候群が問題となり、国による風疹の追加対策(クーポン配布による風疹抗体価測定とワクチン接種)が行われています。
乳児湿疹・汗疹(あせも)
汗のなかの刺激物が刺激となっておこります。
汗のかきやすい時期に、首のうしろ、わきの下、ひじやひざの裏に起こります。
乳児脂漏性湿疹
1-3カ月の乳児に多く、皮膚の赤みやにきびのようなかさぶたやうろこのような湿疹です。
皮脂の多い頭部やおでこ、まゆげによくできます。入浴時にやさしく洗うスキンケアが必要です。
乾燥性湿疹(皮脂欠乏性湿疹)
●症状
皮脂が減少すると、カサカサになり、フケのようなものがでます。
乾燥のかゆみから掻いてしまい、炎症をおこし湿疹がでます。
小児は皮脂の分泌が大人より少ないことに加え、冬の時期による乾燥やタオルで体を洗う習慣などが原因と思われます。
●治療
炎症があれば、一時的に炎症を抑えるステロイド外用剤が使用されます。
また、皮脂欠乏に関しては、ヒルドイドローションが有用です。ヒルドイドには角質水分保持増強作用がありますので、お風呂上りに塗っていただくと水分を閉じ込めるので効果が高いです。
かゆみが強い場合、抗ヒスタミン薬を使用します。