それぞれのピルの違い
どのピルにも、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンが配合されています。
2つの女性ホルモンの配合量の違い、黄体ホルモンの割合の違い、黄体ホルモンの種類の違い、何日内服するかのプランの違い、後発薬か先発薬かの違いにより、表のように分類されます。
当院では以下のピルを取り扱っています。
★印:後発薬(ジェネリック)
OC・・・(低用量)経口避妊薬[自費]
LEP・・・低用量エストロゲン・プロゲスチン配合錠[保険]
ホルモン量の違い~低用量と中用量~
かつてからあるピルは中用量ピルとよばれ、商品名はプラノバールというお薬です。
保険・自費の両方で使用されることがあり、効果も強いですが副作用も強く、原則的には長期に内服するには向いていません。
中用量ピルのホルモン作用を応用しながら、より副作用が少なく、適切な効果が発揮でき、毎日長期に安全に内服できるように開発されたのが低用量ピルです。
ホルモンの配合割合の違い~1相性と3相性~
一粒のピルに含まれている2種類のホルモン、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲスチン)のうち、全てのピルでは卵胞ホルモン(エストロゲン)はどの期間の粒も同じ量含まれています。
黄体ホルモン(プロゲスチン)の配合割合により、日本では一相性か三相性のピルに分類されます。
●一相性のピル
エストロゲン・黄体ホルモンが全ての期間の粒で同じ量がふくまれています。
●三相性のピル
エストロゲン・黄体ホルモンが月経周期の期間により段階的にふくまれています。
自然にくる月経の周期では、排卵後の後半の期間(月経開始日から2週間後以降)に、黄体ホルモンが増えますので、3相性に分類されるピルでは自然の月経に近いようにホルモンを段階的に調整したものもふくまれます。3相性のピルはより自然に近いので、不正出血も起こりにくいともいわれています。
黄体ホルモンの種類の違い~副作用・適応の違い~
エストロゲンの種類はEE(エチニルエストラジオール)の種類ですが、黄体ホルモンの種類は4種類で、開発された古い順に第1~第4世代とよばれます。
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第1世代:NET(ノルエチステロン)
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第2世代:LNG(レボノルゲストレル)
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第3世代:DSG(デゾゲストレル)
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第4世代:DRSP(ドロスピレノン)
この4種類の黄体ホルモンの違いは、アンドロゲン作用の強さの違いで、世代が進むにつれて、NET⇒LNG⇒DSG⇒DRSPの順に弱くなります。
アンドロゲン作用とは、食欲増進、体重増加、多毛、ニキビなどをいいます。
低用量ピルでは、そもそも含まれている量が低用量なので、副作用として現れることはどの種類でも少なく開発されてはいますが、適応や副作用の出方により、黄体ホルモンの種類でピルを選択・変更すると、ご本人に合ったピルが選べます。
周期の違い~シートの数や粒の数の違い~
①1シート21錠タイプ
~自分で休薬期間を7日間つくる~
21錠全てに有効成分が入っていて、21日間服用し、その後7日間休みます。
注意するのは、21錠の内服がおわった次の日から、自分で7日間、薬を服用しない期間を作る必要があります。飲み忘れが多かったり忘れっぽい方は、7日間休薬した翌日から次の新しいシートを開始することを忘れがちですので、28錠タイプのほうがいいかもしれません。
当院では飲み忘れを防ぐため、21錠タイプはほとんど取り扱っておりません。しかし「ジュミーナ21」は、むしろ休薬期間を明確にするために21錠のシートになっています。(※連続投与の項を参照)
②1シート28錠タイプ
~自分で休薬期間をつくらなくていい飲みっぱなしタイプ~
21錠には有効成分が入っていて、最後の7日間(22-28日目)の錠剤は、有効成分ははいっていない、空っぽの錠剤(=プラセボ)になっています。
21日タイプのものだと自分で休薬期間を7日間つくらなければいけず、その翌日から新しいシートを開始することをそのまま忘れてしまうというリスクがあります。
28日タイプだと自動的に有効成分が空の錠剤がセットされているため、ピルを開始したらずっと飲みっぱなしで良く、『毎日1回1日1錠を内服する習慣』を確立してしまえば、何も考えなくていいというメリットがあります。なお、有効成分は21錠タイプのものと同じです。
つまり21錠タイプのシートにプラセボ7日分がセットされているのが28日錠タイプです。
毎日飲む習慣を崩さない為に用意された成分の入っていない偽物のお薬が入っていて、休薬期間中も服用することになります。そうすることで、休薬期間明けにうっかり飲み忘れを防ぎます。
「ジェミーナ28」のみ、有効成分が28錠全てに入っているピルになります。(※連続投与の項を参照)
③フレックスタイプ
~最大120日月経期間をあけられる、そのあと自分で4日間休薬~
国内ではヤーズフレックスのみです。
ヤーズとは同成分で、ヤーズのプラセボがなく全て有効成分というのがヤーズとの違いです。
1シートは28錠、全てに有効成分が入っています。
最大で4シート+αの120日分まで連続で内服可能です。120日間内服したら、その後4日間は自分で休薬し、その後新しいシートを開始します。
ただし2日を超える不正出血(少量の付着程度の点状出血)が続いたら、内服をやめて自分で4日間休薬し、月経様出血をおこさせます(=リセット)。休薬期間の翌日からは、1相性であるため飲みかけのシートの続きから1日1回の内服を再開します。
フレックスタイプは、最低3週間(21日)以上服用します。
経験上、3~4シート目くらいに不正出血がおこることが多いです。
最長で服用出来たら年に3回ほどの出血を起こすだけでコントロールが可能です。
月経自体の回数を減らすため、月経に関わる不快症状や婦人科疾患に対して、有効な可能性があります。
当院でのピル例
[LEP]
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ヤーズフレックス
④連続服用タイプ
~3シート継続して内服する、合計で連続77日内服する、3シート終了後の7日間は自分で休薬する~
国内では、ジェミーナのみです。
28錠タイプを2シート、21錠タイプを1シート、計77日連続して服用することができます。ヤーズフレックスとの違いは、不正出血が起きても77日間までならば連続投与が可能なので、より計画的な連続投与が可能というこです。
またこちらもヤーズフレックスほどではないですが、月経自体の回数を減らし年に3回の月経になりますので、月経に関わる不快症状や婦人科疾患に対して、有効な可能性があります。
しかしシート間違えに注意です。
28錠シート→28錠シート→21錠シートと服用するので、各シートごとの表紙に、開始の月日を、処方薬を受け取り次第にペン等で直接記載しておくのがお勧めです。
なお連続投与でない通常の周期投与も、21日のシートのみ使用することで可能になります。
当院でのピル例
[LEP]
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ジェミーナ
先発薬と後発薬の違い
先発薬は開発されて最初に製薬会社が発売した薬です。
開発した会社は莫大な時間と費用をかけて、ゼロから作成し、最終的には様々な厳しい臨床試験を通過させてやっと新薬という形で販売できます。開発に至る厳しい過程を通過した証明として、国から特許を取得します。
後発薬は、いわゆるジェネリックとよばれ、先発薬の発売からしばらくたってだされた、別の製薬会社が発売したもので、主成分は同じですが先発薬とは異なった添加剤が含まれている可能性があるというだけの違いです。
製薬会社にとっては、開発や研究に費用や時間がかからないだけでなく、販売されてから時間が経っていますのですでに治療効果が証明されていることはメリットということがです。
先発医薬品と比べると費用が数分の1しかかかっていませんので、安価で販売することができますので、増え続ける国の医療費削減にも役立つことが期待されています。
しかしデメリットは後発薬自体は臨床試験を通過したわけではありませんので、わずかに異なった添加剤が先発薬と異なるアレルギー症状等の原因になる可能性はゼロパーセントではありません。
このような経過や患者さんの状態から、処方医師が後発医薬品への変更を認めた場合は、患者の同意を得たうえで、処方箋に記されている医薬品の後発医薬品を処方することができます。
具体的には、ピルの後発薬は以下になります。
当院でのピル例
[先発薬]
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アンジュ
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ヤーズフレックス
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ジェミーナ21
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ジェミーナ28
[後発薬(ジェネリック)]
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ラベルフィーユ28
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ファボワール28
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フリウェルLD
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フリウェルULD
LDとULDの違い
フリウェルにはエストロゲンの成分を含む量によって、LD(=Low Dose(低用量)の意味)か、ULD(=Ultra Low Dose(超低用量)の意味)かの2種類があります。
エストロゲンの成分であるエチニルエストラジオールが、LDには0.035mg配合されていて、ULDは0.020mgとより低用量の配合(=超低用量)になっています。
ULDでさらに最低限のエストロゲンに抑えることで、エストロゲンに起因する血栓症や頭痛や吐き気等の副作用のリスクをさらに抑えるために開発されました。黄体ホルモンの量は同じです。
血栓症等の副作用はへりますが、不正出血の副作用は増える可能性があります。エストロゲンの子宮内膜を子宮内にとどめておく効果も、量を減らすと減るためです。
フリウェルを処方される場合、まずは血栓症等のリスクを減らすためにULDのタイプを処方されることが多いですが、ULDで不正出血が頻繁に起こる場合はLDに変更されることが多いです。
医師と相談しながら、ご自身に合ったタイプを処方してもらいましょう。